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平安勅撰史書研究 : 古代史書の本文と枠組み

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氏     名  佐々木 博 光 氏 名 遠 藤 慶 太 学 位 の 種 類 博 士(文 学) 学 位 記 番 号 第4420号 学位授与年月日 平成16年3月25日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当者 学 位 論 文 名 平安勅撰史書研究― 古代史書の本文と枠組み ― 論文審査委員 主 査 教 授 栄 原 永遠男 副主査 教 授 塚 田 孝 副主査 教 授 村 田 正 博 論 文 内 容 の 要 旨 本論文は、日本古代においてもっとも体系的な文献史料である国史(勅撰史書)をとりあげ、本文確定のた めの写本調査という基礎作業と、各勅撰史書の性格把握とを行なったものである。 まず、前者のⅠ「書写による継承」では、第一章「勅撰史書の書写と印刷-伝本調査の意図するもの-」に おいて、近世の写本を追跡調査する意味を論じている。現在、勅撰史書の本文は、約六十年前に行われた校訂 による活字版が基本テキストとして通行しているが、その本文を現時点で再度吟味するためには、各地に散在 する諸写本を可能な限り集成し、書写系統を確定する必要がある。これは、勅撰史書の本文を再検討する土台 を用意することであり、現行本文の信頼性の度合いを確認するとともに、将来の本文校訂に備える作業でもあ る。 また、第二章「『日本後紀』の諸本と逸文」、第三章「『続日本後紀』の写本について」、第四章「『続日 本後紀』現行本文の問題点」、第五章「『文徳実録』の写本について」、第六章「『三代実録』の写本につい て」の各章は、それぞれの諸写本の調査成果を示した部分である。 これらの章では、多くの写本がつくられた江戸時代に注目し、写本の位置を確認している。この時代は、古 典文献が商業出版によって流布した時代であり、版本と書写本の相互依存によって研究が進展し、清朝考証学 の方法論を応用して文献批判の深化が進んだことを指摘することができるとする。古代史書受容の状況を写本 調査によって明らかにし、近世における古典の普及と古代研究の業績に光をあてることも意図されている。 諸写本の追跡作業では、現在の状況で閲覧可能な写本のすべてを調査し、その成果にもとづいて、『日本後 紀』『続日本後紀』『文徳実録』『三代実録』の諸写本に解題をつけ、それらの系統図を提示している。また、 これらの作業のなかで、従来検討されていなかった重要写本を見出しており、将来の本文校訂の方向性を示し ている。今後、新たな写本が出現した場合にも、それに対応しうる基盤は用意しえたといえる。 つぎに、後半のⅡ「史書の勅撰性」は、各史書の成立時における記述の方向性を把握することを重要な課題 としている。したがって、各史書の成立論では、編纂史料としての古代史書の性格を、勅命によって編纂され た点を重視しながら、解明することに努めている。勅撰史書の各記事の信憑性の有無を議論するのではなく、 編纂過程の傾向・政治事件の叙述を通して、個々の勅撰史書の基本的性格(勅撰性)を明らかにすることに目 的がある。 史書の勅撰性を明らかにするために、まず第七章「国史編纂と素材史料-律令公文を中心として-」では、 史書編纂の素材が律令公文書に求められることを示した上で、史書の記事が勅撰という制度によって精選され たこと、また、そのために記述には信頼性と権威があり、そこから規範としての効力が発生することを指摘し ている。さらに当時の文化状況に照らして、中国の学術享受の観点は無視できないとする。 以下、個々の勅撰史書の性格を、多方面から順次検討している。まず第八章「『続日本紀』の同時代性につ ― 162 ― いて」では、『続日本紀』が最初の当代史であること、長岡京時代までを編纂の対象範囲として総括し、それ によって桓武天皇の治世を肯定する意識にもとづいて編纂されたこと、その帰結として、記事の改変も起こっ たことなどを指摘している。 つぎに、第九章「『日本後紀』における歌謡の位置」では、『日本後紀』には歌謡が採録されるという特徴 があること、その採禄の意味は、宮廷の調和・濃密な君臣秩序を印象付け、治世の安泰を示すところにあった ことをあきらかにしている。また、第十章「『続日本後紀』と承和の変」では、『続日本後紀』では承和の変 が重視されていることを確認したあと、それは、皇統の移動の事情を勅撰史書に書き記すことに目的があった ことを明らかにしている。 つぎに、第十一章「『文徳実録』と春秋」では、

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