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The post welfare state regimes in United Kingdom new Labour educational policies (1) : framework for research

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佛教大学教育学部学会
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01谷川至孝.indd 英国労働党教育政策にみるポスト福祉国家レジーム(1) 1 Ⅰ.問題の所在 1997 年に誕生したブレア労働党政権は、ケ インズ主義的福祉国家(=オールド・レイ バー)でもないニューライト国家でもない「第 三の道」=ニューレイバーを掲げて登場した。 その後日英において、それまでの保守党政権と の連続性・非連続性について、多くの議論がな されてきた。しかし、その多くはサッチャリズ ムを新自由主義と新保守主義で説明し、その枠 組みから両政権の連続性を強調するものであっ た。 例えば、岡本(2006)は以下のとおりヒル (Dave Hill)の評価を紹介している。いくつか の新労働党教育政策には「社会民主主義的なイ デオロギーを見つけることができるが、その多 くは、市場主義の教育への導入や保守的、実利 的な全国共通カリキュラムに代表される新自由 主義、新保守主義に基づくサッチャー政権の政 策の継続」(100 頁)、さらには拡張である。そ して、岡本は「このような評価を下す研究者 は、他にも多く見られる」(101 頁)とし、た とえばウィッティー(Geoff Whitty)をあげて いる。 また、「人間の顔をしたサッチャリズム」 (1997 年 11 月1日付朝日新聞)や「サッチャ リズムのマークⅡ」という表現は、そのイデオ ロギー的な連続性を揶揄した表現であるし、文 部省(2000)も、保守党政権から継承された政 策として以下を上げている。「学校選択の拡大 とその前提となる学校情報の公開、学校監査の 拡大・強化、国の教育課程基準と全国テストの 重視、高等教育の評価・効率的拡大、教育資質 の向上等々」(21 頁)。こうした政策は小さな 政府、規制緩和、民営化、市場原理、自由競 争、自助努力等をキーワードとする新自由主 義と強い国家を示す新保守主義で説明される ニューライト=サッチャリズムの典型的な政策 であり、従って、ブレア政権はサッチャリズム を多分に引き継いでいることは否めない。 しかし、一方でブレア政権は「第三の道」= ニューレイバーを掲げて登場してきたことも厳 然たる事実である。先の岡本の論文も、「ブレ ア政権が保守党政権の遺産をそのまま引き継い でいるのではないということ」(岡本、109 頁) を明らかにしようとするものであった。 ところで、1970 年代末から80 年代にかけて ケインズ主義的福祉国家の限界をいち早く指 摘し、それに代わる社会や国家を構想したの は、ニューライトの理論家、政治家たちであっ た。英国ではサッチャー(1979 〜 1990)、メー ジャー政権(1990 〜 1997)が誕生し、米国で はレーガンが大統領となった(1981 〜 1989)。 我が国でも中曽根康弘が首相の地位に就い た(1982 〜 1987)。しかしその後の我が国の 状況は「失われた10 年」を経た後、華々しく 登場した小泉政権(2001 〜 2006)は典型的な ニューライト政権であった。一方、2009 年の 総選挙に圧勝し政権交代を果たした民主党政権 英国労働党教育政策にみる ポスト福祉国家レジーム(1) ―先行研究の整理と研究枠組みの設定― 教育学科 谷 川 至 孝 佛教大学教育学部学会紀要 第 11 号(2012 年3月) 2 は、明確な国家ビジョンに基づく政策を遂行で きないまま、2011 年3月 11 日大災害に直面し た。今日、2大政党が復興後の国家・社会ビ ジョンを提起しないことを嘆くマスコミの論調 は少なくない。このように我が国ではポスト福 祉国家の国家・社会像が、ニューライトのそれ 以外オルタナティブが存在しないまま今日に 至っている。そして、教育政策もその例外では ない。 先に述べたブレア労働党政権とそれまでの保 守党政権との連続性・非連続性についての議論 は、とりもなおさずブレア労働党政権が示した 国家・社会像がニューライトのオルタナティブ たり得るかという議論に他ならない。そしてこ の研究はこのような今日の我が国の政治状況か らしても、これからの我が国の国家・社会像、 それに基づく教育政策を考える上で重要な意義 のある研究と自負している。 さて、本研究は、大田直子の「品質保証国 家」論、小堀眞裕の「規制国家」Regulatory State 論を主に取り上げ、まず、この連続性・ 非連続性について

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