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Analysis of the 2011 general election in Singapore: the emergence of the "New Normal" in Singapore politics

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慶應義塾大学法学研究会
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Abstract

シンガポール二〇一一年総選挙の分析 : 選挙結果が示す「新しい政治」の始まり 1 シンガポール二〇一一年総選挙の分析 シンガポール二〇一一年総選挙の分析 ︱︱ 選挙結果が示す「新しい政治」の始まり ︱︱ 板    谷    大    世 はじめに第一章   選挙制度の概観と選挙結果について   第一節   選挙制度について   第二節   立候補状況について   第三節   選挙結果について 第二章   選挙制度の変遷   第一節   非選挙区制度の導入(一九八四年)   第二節   集団代表選挙区制度の導入(一九八八年)   第三節   選挙制度改革のインパクト 第三章   変化した選挙戦と変容する社会   第一節   選挙戦での争点の変化   第二節   物価と住宅価格の上昇   第三節   尊大で横柄な人々( P rou d an d A rrog an t P eop le, P A P ) 第四章   新しい有権者と野党候補者   第一節   世代交代   第二節   高学歴化   第三節   政治指向の変化   第四節   新しい野党候補者 第五章   選挙戦   第一節   与野党の選挙戦略   第二節   WPの選挙戦略   第三節  「新しい政治」の始まり おわりに 2 法学研究 86 巻 2 号(2013:2) はじめに   二〇一一年五月七日に行われたシンガポール共和国の国会議員総選挙は、同国政治の分水嶺と位置づけられる 結果に終わった。過去の選挙で圧倒的な強さを見せてきた政権与党がこれまでの強さを発揮できず、逆に野党は従来にも増した支持を有権者から受けたからである。野党が「躍進」した背景にはシンガポールにおける社会経済的な変化がある。野党は社会経済的な要素を選挙戦略と選挙戦術に組み込むことで、選挙では与党を苦しめた。  今回の選挙では苦戦を強いられたとはいえ、政権与党である人民行動党 ( P eopleʼs A ction P arty 、以下PAPと 略記) は議席定数の九割以上を獲得した。その意味ではこれまで通り与党は順当な勝利を収めたといえる ( 表1 参照) 。しかしながら、以下の四点において今回の選挙結果は特徴的である。   第一に、今回の選挙でのPAPの得票率は六〇・一%であり、これは過去最低である (図1参照) 。その一方で ほぼ全ての野党はその得票率を伸ばした ( 図2 参照) 。政治的自由が保障されている民主的国家において政権与 党の得票率が六割を超えるとすると、それは与党の圧勝と評される。それに対して、政治的自由が事実上制限されている選挙権威主義的な政治体制 ( electoral authoritarianism ))1 ( をとるシンガポールにおいて、得票率の四割近 くが野党に流れる事態は異常といえる。なぜならば、本稿第二章で詳述するように、シンガポールにおいては与党に有利な選挙制度が確立しており、野党が与党に伍して戦うことが困難であると考えられてきたからである。  第二に、大物政治家が落選したことである。アルジュニード ( A ljunied ) 集団代表選挙区 ( G roup R epresenta­ tion C onstituency 、以下GRCと略記) では、PAPと労働者党 ( W orkersʼ P arty 、以下WPと略記) の一騎打ちと なった。後述のようにGRCはシンガポール独特の選挙制度であり、小選挙区に比べて候補者の所属する政党の組織力が求められる。それゆえに過去において野党議員は小選挙区でしか当選したことがなかった。しかし、今 3 シンガポール二〇一一年総選挙の分析 回はGRCで野党議員が初当選しただけでなく、外務大臣をはじめとする現職の大臣三 人 )2 ( が落選した。中央行政機関 (外 務省) の長が落選するのは独立後初のことであった。   第三に、野党が善戦したことである。PAPは一九六五年 の同国独立以来、一九八一年の補欠選挙で一議席を野党に明け渡すまで国会の全議席を独占していた。同補欠選挙において「一党制」が崩れた後も、野党議員の数は一九九一年総選挙時の四名が最大であった。しかし、今回の選挙において野党はその議席数を改選前の二名から六名へと三倍増させ、独立以来

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