Affordable Access

ラシによる「創世記註解」の翻訳と註解 (1) : 創世記22章を例として

Authors
Publisher
松蔭女子学院大学学術研究会
Publication Date

Abstract

Kobe Shoin Women’s University Repository Title ラシによる「創世記註解」の翻訳と註解(1)-創世記22 章を例として― Commentary on Genesis by Rashi(1) Author(s) 勝村弘也(Hiroya Katsumura) Citation キリスト教論藻(KIRISUTOKYO RONSO)Bulletin of the Institute for Research of Christian Culture,No.20: 65-88 Issue Date 1987 Resource Type Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version URL Right Additional Information ラシによる 「創世記註解」の翻訳 と註解(1) 創世記22章を例 として 勝 村 弘 也 1.は じめ に くロ く ラ ラシ(Raschi;1040-1105年)は,マイモニデスや イブン ・エズラ等 ととも に中世のユダヤ人世界を代表す る偉大な人物であったに もかかわらず 彼 は学派 を形成 して後学への道 を備 えたという点において,お そらく現代のフ ロイ トや レヴィ ・ス トロースのような学者と比較可能であろう,わ が国 においてはその学的業績についてほ とんど紹介されていないのが現状である ように思われる。百科辞典の若干の記述 を別にすれば,ユ ダヤ教に関する概 説書において彼の生涯 とその学的業績についての簡潔 な叙述が見い出される しお にす ぎない。このような概説的叙述以上の仕方で,ラ シおよびその学派の活 動についてわが国の学界に紹介 を試みた者は,今 日まで見当たらない。 もっ とも聖書註解 に際 して,問 題の一語あるいは一句について何 らかのかたちで ラシの解釈 に言及 した者は存在するであろう。 しか し,それ もラシの釈義 自 体 を正面から取 り上げて問題にしたものではない。このような現状であるの で,本 論考においてはまず,ラ シの生涯 とその活動について若干の情報 を提 供 してお く。 (4) 2.ラ シの生涯 とその学問的活動 ラ シ と い う 通 称 は,ラ ビ ・シ ェ ロ モ ー ・ベ ン ・イ ツ ハ キ(rabbiselomo"ben 65 jishagi;ドイツ語式に綴れば,RabbiSalomobenIsaak)のイニシャルを組 み合わせて出来たものである。彼は,1040年,当時シャンパーニュ地方(仏) の商業都市 として活況を呈 しつつあった トロア(Troyes)のユダヤ人学者の 家に生 まれた。彼の書きのこしたv大 な著作(聖 書およびタルムー ドへの註 解)に 比べて,彼 の生涯について正確に知 りうる事柄は少ないが,そ の分だ け多 くの伝説に取 り巻かれている。彼の誕生について も,い くつかの伝説が 語 り伝zら れているが,次 のようなものもある。 ラシの父イツハキは非常に珍 しい宝石 を持っていた。キ リス ト教徒がこれ を知って,或 るマ ドンナ像の眼にするためにこの宝石 を買取 ろうとした。 イ ツハキは自分の宝石が偶像礼拝に用いられるのをよしとせず,ど のような値 がつこうと決 して売ろうとは しなかった。何 として もこれを買取 ろうとした キリス ト教徒たちは,一 計を案 じて彼を船に連れ こみ,売 らないのなら溺死 させるぞと脅迫 した。ラビ ・イツハキは,と っさに宝石 を川の中に投げ込 ん だ。この瞬間,トロアのシナ ゴーグで天からの声が鳴 り響いて言った,「イツ ハ キよ,お まえにひとりの息子が与えられる。彼は輝ける宝石のごとく,そ の知恵をもって世界を照 らすであろう」 と。 父イツハキが実際にラビとして活動 していたかどうかは定かではない。 し か し,彼が息子のシェロモー に学問の手ほ どきをしたことは確実であろう。 また母の兄弟にあたるミドラシの研究家,ラ ビ ・シメオン ・ベ ン ・イツバ ク が,少 年シェロモーを教育 したことも十分考 えられる。彼は,賑 わう商都 ト ロアで銀行業務について,さ まざまな物品の取 り引きについて,は んだ付

There are no comments yet on this publication. Be the first to share your thoughts.