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Study of baryon resonances in πN→ππN reaction

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氏名(生年月日)          (         ) 氏 名 鎌 野 寛 之 学 位 の 種 類 博 士(理 学) 学 位 記 番 号 第4819号 学位授与年月日 平成18年3月24日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当者 学 位 論 文 名 Study of baryon resonances in πN→ππN reaction (πN→ππN反応におけるバリオン共鳴の研究) 論文審査委員 主査 教 授 櫻 木 弘 之 副査 教 授 牲 川 章 副査 助教授 有 馬 正 樹 論 文 内 容 の 要 旨 πN→ππN反応は、ストレンジネスを持たないバリオン共鳴の研究において重要な反応チャネルのひとつで ある。また、この反応の研究を通じてσ中間子やππ散乱長に関して有益な情報が得られると期待されている。 これらの情報はハドロン相におけるカイラル対称性の自発的破れの機構を理解するうえで鍵になるものである。 近年、BNLで行われている中間子ビームを用いた一連のハドロン反応実験(Crystal Ball Collaboration;CBC) のなかで、中間エネルギー領域におけるπ-p→π0π0n反応の高精度な実験データが得られ、反応過程に現 れるバリオン共鳴やσ中間子に関連した興味深い事実が報告されている。 本論文では、CBC実験に対応するエネルギー領域のπN→ππN反応を理論的に研究する。特に、全断面積お よび不変質量分布の計算を通じて、この反応へのバリオン共鳴の影響やσ中間子の存在について議論する。計 算に際して、ハドロンの自由度は相対論的な場として記述し、共鳴状態のもつ幅やハドロンの有限の大きさに 起因する効果は現象論的に導入される。これに対し、σ中間子は二つのπ中間子の再散乱機構によって動的に 生成される。また、計算はカイラル簡約公式と呼ばれる手法を出発点にして行われる。これにより、現象論的 な議論においてもカイラル対称性からの要請を常に尊重した形で議論を進めることが可能になる。 以上の手法に基づいた議論から、主に以下の結論を得た。(1)CBC実験で得られたデータの特徴的な振舞い は、N*(1440)の二つの崩壊過程、N*→πΔおよび N*→N(ππ)S、の強い干渉効果に起因する。(2)σ中間子の 伝播に相当する二つのπ中間子の再散乱により生じる散乱振幅の運動量依存性を考慮しなければ、いくつかの 実験データ、特にπ-p →π0π0n反応のπ0π0質量分布、を再現することが難しい。このことは、πN→π πN反応がσ中間子の存在を実証するうえで実際に有益な手掛かりになることを示唆している。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 π中間子・核子(πN)散乱の情報は、ハドロンの構造やハドロン間相互作用を調べるうえで重要なものであ る。中でもπN→ππN反応はπN散乱における最大の非弾性チャンネルであり、さまざまな研究がなされてい る。本研究で取り上げている「カイラル対称性に基づくバリオン共鳴の性質の理解」というテーマも興味深い ものの一つである。 本研究は、Δ共鳴とローパー共鳴と呼ばれるバリオン共鳴に着目し、それらがπN→ππN反応に与える影響 を系統的に考察したものである。その際、カイラル対称性がハドロン物理において最も基本的であることを考 慮し、マスターフォーミュラという定式化を用いることで、本研究での議論にカイラル対称性が正確に反映さ れるようにしている。 -208- -209- 本論文の第一章では研究の背景が説明され、第二章ではマスターフォーミュラにもとづく定式化が与えられ ている。第三章ではπN→ππN反応におけるバリオン共鳴の役割について、最新のデータも含めた色々な観測 量を系統的に解析している。また、終状態に現れるπ中間子のスカラー・アイソスカラー相関に言及し、謎の 粒子であるσ中間子との関連を議論している。そして第四章で本論文の全内容をまとめている。 以上のように、本研究はπN→ππN反応の解析を通して、バリオン共鳴についての新しい知見を得たもので ある。カイラル対称性を最大限尊重した定式化に基づいていることは、本研究の議論の一般性を支えるうえで 重要な意義がある。そして、バリオン共鳴の性質を明確にするための新しい試みとしてハドロン物理に対する 大きな貢献をしている。よって本論文の著者は、博士(理学)の学位を受ける資格を有するものと認める。

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