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平成23年度「独創性のある生命科学研究」プロジェクト型研究課題 ゆるむ事のない人工関節開発へのブレークスルー

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308847_01石子.indd 旭川医科大学研究フォーラム 13 :100 ~ 103,2012  ― 100 ― 平成23年度「独創性のある生命科学研究」プロジェクト型研究課題 ゆるむ事のない人工関節開発へのブレークスルー 松 野 丈 夫* 伊 藤   浩* 谷 野 弘 昌* *旭川医科大学 整形外科・人工関節講座 依 頼 稿(報告) [背景・目的]  人工股関節置換術は、変形性股関節症・大腿骨頭壊 死・関節リウマチによる股関節症・大腿骨頚部骨折な どの股関節疾患の疼痛・歩行困難などの症状を改善し QOL を向上させるのに有効な治療法として確立して いる。その一方、ゆるみや摩耗、脱臼、感染症、イン プラントの破損などの原因で再置換術が必要となる問 題があり、若年患者への適用が増え平均寿命が伸びて いることから、長期成績の更なる改善が望まれている。  人工股関節はその固定方法によって骨セメントを使 用するタイプと骨セメントを使用しないタイプ(セメ ントレス人工股関節)に分けられ、近年はセメントレ ス人工股関節が主流を占めるようになっている。近年 のセメントレス人工股関節はインプラント金属表面に 多孔質構造をもち、多孔質表面に骨が入り込むことに よって人工股関節が骨に固着される。通常の人工股関 節では多孔質表面に骨が入り込むのに約8~ 12 週要 し、骨が入り込むのは多孔質表面の一部分である。従 って、人工股関節の長期成績を改善するには、より早 期にかつより強固に骨を多孔質表面に誘導するような 多孔質表面の改良が望まれる。また、現状の製造方法 では、多孔質表面は通常金属母材に接合されているた め、多孔質表面自体が剥離するというリスクがあり、 仮に骨が多孔質表面に十分入り込んだとしても、必ず しも骨との固着を保証できないという問題を抱えてい る。さらに人工関節の金属材料として主に使われてい るのは Co-Cr-Mo 合金とチタン合金であり、チタン合 金のほとんどは Ti-6Al-4V 合金である。Ti-6Al-4V 合 金は良好な生体親和性を示してきたが V(バナジウム) と Al(アルミニウム)の生体への影響が懸念されて いる。本稿では我々の取り組んでいるセメントレス人 工股関節開発につき報告する。 [開発への取り組み]   文 部 科 学 省 は 平 成 19 年 度 か ら「 橋 渡 し 研 究 (Translational Research)支援推進プログラム」を実施 し、同省が同プログラムを実施するために採択した6 つの橋渡し研究支援推進プログラムのひとつが札幌医 科大学・北海道大学大学院医学研究科・旭川医科大学 の 3 医育大学が含まれる「オール北海道先進医学・医 療拠点形成プロジェクト」であり、我々のグループが 従来から行ってきた人工関節の研究 1) を発展させた 「ゆるむ事のない人工関節開発へのブレークスルーの 橋渡し研究」というシーズが採択され平成 19 年 8 月 1 日~平成 24 年 3 月 31 日の期間に新材料の開発と治 験の入り口までのデータ蓄積を北海道臨床開発機構、 旭川医科大学研究支援室などの支援のもと行ってきた 2)。またこのシーズは我々が共同研究者として参加す る経済産業省のスーパー特区「生体融合を可能とする 人工関節の患者別受注生産モデルの構築」の一部でも ある。この開発を経て文部科学省・旭川医科大学・北 海道臨床開発機構の支援のもと平成 23 年 3 月に医薬 品医療機器総合機構(PMDA)にて PMDA 相談を行 い平成 23 年7月に「股関節機能不全患者に対する新 規人工股関節の有効性および安全性の検討」(治験責 任者;伊藤浩教授)という治験計画届書が受付され平 成 23 年 11 月から旭川医科大学病院とえにわ病院で医 ― 101 ― 旭川医科大学研究フォーラム 13 :100 ~ 103,2012  師主導型治験がはじまった。 [新しい人工関節]  橋渡し研究支援推進プログラムで開発された新しい 人工関節を図1に示す。この人工関節は先に述べた問 題点を解決するため3つの新しい技術が導入されてい る。 1.GRAPE Technology の導入;純チタン・チタン 合金表面に適切な溝・多孔質がある場合に熱酸化 するだけで金属表面にルチル型 TiO2 が形成され、 Ti-OH 基の存在、局所のイオン濃度変化などにより 擬似体液中に浸漬しておくと

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