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公共哲学セクション&公共政策セクション・ジョイント対話研究会(福祉環境交流センター連続セミナー第40回)報告

Authors
Publisher
千葉大学大学院人文社会科学研究科
Keywords
  • 生物多様性
  • 環境倫理
  • バイオフィリア仮説
  • 里山
  • ランドスケープ
  • Ndc:360

Abstract

09-234.indb 289 【報告・紹介】 デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』を読む ――公共哲学セクション&公共政策セクション・ジョイント対話研究会 (福祉環境交流センター連続セミナー第 40回)報告 千葉大学公共研究センター フェロー  浅田 進史  2006年 9月 14日(木)、デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』 (日経 BP社、2006年 3月)の訳書刊行を契機として、千葉大学 21世紀 COE プログラム「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」公共哲学部門・公共 政策部門のジョイント対話研究会が開催された1。本研究会は、上記の COEプ ログラムのリサーチ・アシスタントの吉永明弘と千葉大学大学院社会文化科学 研究科博士課程の角田季美枝の両氏が同書について、それぞれ環境倫理学と政 策論の観点から報告を行った。次に、同訳書解説を執筆した岸由二氏(慶應義 塾大学教授)よりコメントを得た後、最後にフロアを交えて議論を行う形式で 進んだ。  千葉大学 21世紀 COEプログラムが岸由二氏を迎えたのは、今回をあわせて、 すでに 3度に及ぶ。最初は、2006年 1月 28日に開催されたシンポジウム「風 土論・環境倫理・公共性」において、次に、2006年 7月 19日の「『場所の感 覚』をめぐる連続セミナー」第 3回「『場所の感覚』と『環境と福祉の統合』」 においてであり、ともに報告者として招聘している2。それは、同氏の問題提 起の独特の魅力とそれに対する理解を深めようとする企画者の意図の反映に他 1 訳者は以下、狩野秀之、新妻昭夫、牧野俊一、山下恵子。原著は、David Takacs, The Idea of Biodiversity: Philosophies of Paradise (Baltimore: Johns Hopkins University Press, 1996). 2 シンポジウム「風土論・環境倫理・公共性」については、本誌第 3巻第 2号特集を、 「『場所の感覚』をめぐる連続セミナー」については、本誌第 3巻第 3号の報告を参照。 ともに、千葉大学大学院社会文化科学研究科「『場所の感覚』の総合政策的検討」プ ロジェクトとの共催による。 デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』を読む 290 ならない。  吉永報告では、まず、タカーチの分析が各章ごとに要約された。その上で、 タカーチの議論と環境倫理学における「自然の価値論」および「環境プラグマ ティズム」との関連が論じられ、最後に、これまで 2度にわたる本 COE関連 シンポジウム・研究会での岸報告への疑問と意見が提示された。この紹介にお いて示された、タカーチが本質主義と構成主義、および実在主義と構成主義の 中間の立場をとっていることや、タカーチがとくにバイオフィリア的な価値と 変容的価値を強調しているという点については、報告者・コメンテーターとも に肯定的な評価がなされた。同報告のうち、岸氏への疑問と意見に係わる部分 は以下で記すが、それ以外の詳細については本号の吉永氏の書評と重複するの で割愛する。  角田報告では、政策論の視点から、タカーチの著作および岸氏の解説を分析 し、さらにそれを土台に各国および日本の生物多様性政策の現状を紹介したも のであり、とくに日本の生物多様性国家戦略(第一次国家戦略)と新・生物多 様性国家戦略(第二次、以下、第二次国家戦略と記す)の相違の鍵概念「里地・ 里山概念」を説明した。タカーチの著作については、公共政策・環境政策の妥 当性・正当性に係わる「生物多様性」の価値(第 5章)と、実際に生物多様 性保全をキーワードに環境政策を展開するコスタリカの生物多様性保全研究所 (INBio)の事例分析(第 6章)、「生物多様性」概念の積極的推進者であり「バ イオフィリア」仮説の提唱であるエドワード・O・ウィルソンの研究の立脚点 や方向性の評価(第7章)、結論(第 8章)の紹介をした。岸氏の解説でも批 判的に取り上げられている、日本の第二次国家戦略に導入された「里山」概念 の政治性について、里山概念の「変遷」およびエドワード・レルフの「場所性」 との関連で論じられた。里山は奥山に対する用語で「農用地林」の別称でもあ るが、いまの「落葉広葉樹林が主体の雑木林」という用いられ方は比較的新し いものとされている。中世では里山は鬱蒼と茂っていた(常緑広葉樹林)とす る史料もあるという。 千葉大学 公共研究 第3巻第4号(2007 年3月) 291

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