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アダム スミス ノ ホウホウ A Touch of Adam Smith

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Publication Date
Keywords
  • 経済学説史
  • History Of Political Economy

Abstract

4 基礎科目Ⅱ・経済学説史 (講義資料) アダム・スミスの方法 :ATouchofAdamSmith 白 銀 久 紀 アダム・スミスの 『国富論』が経済学の誕生を告げる書であるとするならば,スミスが 『国富 論』を構想し,執筆し,提示した18世紀西ヨーロッパの社会思想の状況に目を配ることはなしには 経済学の誕生を語ることができない。いいかえれば,アダム・スミスを 「経済学の父」と言うのな らば,18世紀西ヨーロッパの社会思想の状況は 「経済学の母」であると言わなければならない。も ちろん,「経済学の父」という愉えは一神教の世界観にもとづいて,すべての創造物は 「父」を系 譜上の始原とするとの考え方に依っているのであって,必ずしも踏襲すべき表現ではない。しかし, 経済学の理論は生産物についてはすべての生産物にとって 「労働は父である」と宣言するものの, 同時に土地がその 「母」であると付言しており,「生産物の誕生」を正確に把撞している1)。労働の みでは,すなわち土地に代表される自然やそれに由来する生産手段の存在なしには,「生産物の誕 生」はありえないことを明確に認識してきたのである。 さて,「経済学の母」である18世紀西ヨーロッパの社会思想に立ち返ると,西ヨーロッパの18世 紀はしばしば 「啓蒙の世紀」と呼ばれる。この 「世紀」に,世界観は神中心から人間中心へと転換 し,そして人間は何よりも理性的存在であることが強調された。このような認識それ自体が誤って いるわけではないが,それだけでは,18世紀西ヨーロッパの社会思想状況を把握するには不十分で あるばかりでなく,誤解を招きかねない。もちろん 「啓蒙の世紀」(あるいはその代表的思想家の 名を冠して 「ヴオルテール2)の世紀」といわれることもある)は,『百科全書』に顕著なように人 間理性 reasonが圧倒的優位を発揮したという意味では当を得た表現であり,スコットランド啓蒙 ScottishEnlightenmentもその一環としての面を持っているが,それでもなお,同じ18世紀の英仏 2カ国に限定しても,イギリスにおけるハチスンの道徳感覚論,フランスにおける3)コンデイヤッ 1) 「労働は父,土地は母」 という表現自体はウイリアム ・ペティWilliamPetty(1623-87)の時代にまで 遡ることができる。「土地が富の母であるように,労働は富の父であり,その能動的要素 activePrinciple である」(ペティ (大内兵衛 ・松川七郎訳)『租税貢納論』岩波文庫 1952,119ページ)0 2) ヴオ)i,テール Voltaire(169411778)は自身が r百科全書lに寄稿こそしなかったが,ダランベールや デイドロなどの百科全書派に与えた影響は大きい。また,スミスがヴオルテールをいかに崇拝 していたか は,「ヴオルテールさんとかいう人 aVoltaire」という話を小耳に挟んだスミスが,「君 ! ヴオルテール はかのヴオルテールしかいないよ」と奮めた逸話が余すところなく示している。 3) スミスのフランス啓蒙に対する関係で見落としてほならないのは,「エディンバラ・レヴュー」誌上に発 表されたJ=J.ルソー 『人間不平等起源論』の書評の存在と,『国富論』に見られるモンテスキュー 『法の 精神』とのおよそ40ヶ所の対応関係である。 アダム ・スミスの方法 :ATouchofAdamSmith 5 クの 『感覚論 TraitddesSensationsA(1754)に代表される人間感覚 sense論が捷起されていたので あって,この意味で18世紀を 「感覚の世紀」と呼んでもさほど的外れというわけではない。さらに はヒュ-ムのように,理性は情念 passionsの奴隷であると位置づけ4),哲学者の理性と普通の人間 の日常感覚や情念の間を往還しつつ,情念主導のもと理性と情念をふたつながらに論じる必要性を 説いた思想家もこの 「世紀」には活躍している。 考えてみれば,近代以前の神中心の世界観に対時する近代の人間中心の人間観には,理性のみな らず感覚や情念が重要な要因であったと見るのが自然である。また,現実の人間には理性と感覚の みならず,感情と直観も備わっている。したがって,理性と感情,感覚と直観,この4者で多元的 に人間を捉える5)ことが自然である以上,人間,あるいは人間本性 humannatureをひたすら追求 した社会思想の18世紀は 「啓蒙の世紀」にはけっして一元化することはできない6)0 さて,本稿のテーマであるアダム ・スミスは,このような18世紀おいて自らの処女作を 『道徳感

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