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レルヒとロフラーノ―『騎兵の物語』における鏡像と「他者」―

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1 ’17'〃、ノ11ゅ.八M""1m“ /1化仏Q)". V()1.18,73-80(1997) レルヒとロフラーノ ー『騎兵の物語』における鏡像と「他者」- '11ITIlliilI ホフマンスタールのこの煙繍は1899年の発表以来、多くの読肴や研究者を魅了しつつも、他 力で解き難い謎を今日まで残して現代のわれわれの眼前に横たわっている。本論は作品分析そ のものよりも、まずそれへの足掛かりを探すのが目的である。’試作SchreibUbung」である、 と作者はこの小iIi1I1を発行人への手紙において呼び、またそれへの言及も以後ほとんどないのだ が、それでも幾度かの初期散文集の出版に際してはリストから除くことはなかった。')『物語』 はiiiなる一般的賛辞を拒否するほど優れた作品には違いないとしても、ここにいかなる文学的 l111ililI(をいかにして見出すかという議論になると、分析の方向は千差万別である。2)鉱脈は深肘 に隠されている。鍍考は以下の論述において、ホフマンスタールが世紀末のオーストリア帝同 の抱え込んだ病理にどんな象徴的表現をもって立ち向かったのかの一端を探り当てたいと考え る。 物語は独立運動が激しさを増した1911t紀半ば、オーストリア傘下のイタリアの都市ミラノ に台頭した独立派を再制LlLようと乗})込んだ騎兵ili〔ト」|の入城から始まる。語り手はまるで戦 時ニュースでも読み上げるかのような「1調でその様子を語り始め、この口調は作品のテーマそ のものが深臓心理の領野の奥深<にまで達すると推測されるにもかかわらず、簸後まで変化す ることがない。つまり、この物語世界外の語りの視点はいわば焦点化ゼロに設定されていると 同時に、等質的物語世界という特徴によって、そのまま内的焦点化にもスライドする可能性を 秘めている。3) 『1848年7)]22に1午前6時前、ヴアルモーデン1W騎兵団第二騎兵[|I隊の値察分遣隊、すなわ ち馬上の百七名の兵を引き連れた騎兵大尉ロフラーノ男爵はサン・アレッサンドロ将校館を立 ち去り、ミラノ方面へと馬を駆っていたJ1。.')この美しい非武装のままの大都iljはしかし騎兵た 旭1111矢科大学医学Wllドイツ語e-mail:上344@asahikawa-med・acjp -73- レルヒとロフラーノー『騎兵の物語』における鏡像と「他者」-, ちの入城を何の抵抗もなしに許したのではない。光のなかにたゆたいつつみずからそのなかに 溺れ幾重にも重なる色彩の絨毯の隅々には、マナラ軍団の歩士たち、ピサ軍団の姿艇しい学生 たち、ベルガモ風衣装の伝令、さらには法王軍所脇のナポリ義勇兵らが潜んでいたのである。 しかし形勢に変化はなく、競実に武装解除を進めた末に捕虜護送のため隊を離れた兵を除いた 78名の中隊は市門をくぐる。そのなかには、郊外の美しい邸宅を包囲し、かの18人の学生たち を捕えたアントン・レルヒ騎兵曹長も含まれている。 この短篇の主人公レルヒ(焦点化を受ける人物という意|床で)は他の兵士同様「血の混じっ た壌だらけの顔」(非人格化された「Maske」)で、空虚な歓呼のジェスチャアーを演じる群衆 たちへの警戒のF1を光らせつつテイツイネーゼ門から出てゆく。この門には皮肉にもオースト リア人によってHzcliPD/Woγ""zS()Sノウji/“5)と刻まれている。 こうして兵士たちの行進は、彼らが捧げ持つ刀身の放つ反射光に包まれて、町を勇壮な凱旋 気分一色に染めたのである。ただし、この町への入城を指揮したのはロフラーノ男爵であった ことを忘れてはならない。彼は自らにもまた中隊に対してもこの行動を断念することができな かった、と語られる。 中隊が市門を出て間もなく語り手の視点はレルヒのそれへと溶け込む。「ヴーイッチ・エピ ソード」がここから始まる。「好奇心」が馬上の彼の注意を沿道のとある淡黄色の家の窓辺へと 誘う。彼は窓辺に垣間見た女性(まなざしの比噛)を、ひと昔ほど前にウィーンで出会ったス ラブ人らしいと予感し、さらに確信をもって彼女と「ヴーイッチ」という姓であった女性とを 同一視する。彼の脳裏には彼女の母性的な「鏡像」が浮かび上がる。その際彼女の体型や、身 振りの特徴、さらに媚態のこもった微笑などが過去と現在の彼女を橋渡しする。窓辺の目辮、 天竺葵の植木鉢、それに室内のマホガニー製の箪笥、素焼きの徹物は神話的世界を》模倣してい る。「白い」ベッドも欠けてはいない。これらも瞬時に彼の網膜に像を結ぶ。そればかりではな い。部屋の奥で「髭のない、肥満した-人の男」が隠し扉の向こうに姿を消すのも見逃さない。 しかし、レルヒはこの男を捕えようと駆け出さない。そうするには彼は「ヴーイッチ」のまな ざ

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