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学んでほしい「経済良識」, 11のエッセンス -社会の「良き船長」となるために

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立命館大学経済学会
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18 学んでほしい「経済良識」,]∠Lのエッセンス 社会の「良き船長」となるために 藤 岡 厚 「…近代科学の実証と求道者の実験とわれらの直観の一致に於 いて論じたい。世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸 福はあり得ない。自我の意識は個人から集団・社会・宇宙と次 第に進化する。・‥正しく強く生きるとは,銀河系を自らの中に 意識してこれに応じていくことである。」               (宮沢賢治『農民芸術概論綱要』) 「私は,国と国の経済関係を増やそうとする人よりも減らそう とする人のほうに共感する。思想・知識・芸術・理解・旅と言 ったものは,本質的に国境に縛られるべきものではないが,モ ノについては無理のない範囲で国産のものを使うべきだし,な によりも金融を国内にとどめるべきだ」                     (J・M・ケインズ)  「経済良識」とは,経済面でのコモンセンス(国民的良識)のこと。現代経済 を生き抜いていくうえで最低限必要な「エコノミック・リテラシー」のことだ と言い換えてもよい。かつてジェーン・ロビンソン女史が経済学を学ぶ目的と して,「職業的エコノミストにだまされない力をつけること」をあげたことが あるが,「エコノミック・リテラシー」の現代的内容をどのように構想し,ど のような方法にもとづいて経済教育を実践したらよいのだろうか。  以下のトピックス(ないし問題)について,真実と道理に根ざした解答を得 ることが,経済良識=エコノミック・リテラシーの不可欠の構成部分をなすの ではないか。他にも見逃した重要な問題があろうが,すくなくとも次の11の卜 ピックスは抜かせないと思う。                 (18)         学んでほしい「経済良識」,11のエッセンス(藤岡)       19  「学んでほしい,学ぶに値する問題」として,なにゆえ11のトピックスを選 んだのか。その判定の根拠は何かと問われれば,結局は時代認識の問題にいき つく。そこで私の体験もまじえて,「何のために学ぶのか」というテーマにつ いての私見を披露することから本稿を始めたいと考える。 1。何のために学ぶのか  私が体験した「健康敗戦」  日本は62年前の1945年8月に,アジア太平洋戦争に完敗するという「敗戦体 験」をした。その後,日本経済は高度成長をとげ,「世界の工場」として浮上 したあげく, 1980年代末には日本の土地市場と株式市場を舞台に,史上空前の バブルを発生せしめた。そしてそのバブル景気は,17年前の1990年前後に破裂 し,今日まで続くデフレ経済=「平成不況」の泥沼に沈みこんでいった。これ は,「第二の経済敗戦」と呼んでもいい事態であった。米国に反抗しないよう に, 1945年に日本帝国の軍事的牙が抜かれたとすると,17年前には経済的牙が 抜かれた。苦境に陥った日本経済とは対照的に米国経済は大変な繁栄を謳歌 し,中国が「世界の工場」として浮上する時代を迎えることとなる。  この伝でいうと,今から6年前の2001年6月9日の朝方に私の頭脳は,突如 「第三の敗戦」ともいうべき「健康敗戦」を体験することになった。当時私は, 春先からなにかと忙しかった。「疲れたな」と体のほうは脳に合図を送ってい たはずなのだが,この異変を予知できるような「賢い体づくり」を私は怠って いた。学生時代に長距離走のランナーだったこともあり,「私の心臓は鉄の心 臓」,「頑丈なトーチカのような心臓の持ち主だ」という先入観に囚われ,ひた すら「賢い頭」の指令どおりに動く「丈夫な体づくり」にまい進していたのだ。 水泳教室に通いジョッギングするなどして,体を鍛えていた。私の頭(自我・ 脳)は,体・大地から分離した状態であり,「頭」が「体」を思うままに抑圧 し,独裁していただけなのだが,この状態を「健康」と誤認していた。                  ( 19 )  20            立命館経済学(56巻特別号8)  6月9日の土曜日の朝に突然,体(自然)の頭(自我)にたいする反乱が始 まった。その日の午前7時半ころに私は,「断末魔」のような声をだしてうな りだし,心肺停止の局面にまで立ちいたったそうである。突然死の典型的症例 だといわれる心室細動に襲われたのだ。発作後三日間の記憶はまったくないの で,「…そうである」というあいまいな表現にとどめるほかないのだが。  心室細動になった場合,1ヵ月後の生存率というのは6%ぐらいだそうだ。

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