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「日本的経営」論議の社会的側面についての考察(Ⅰ)

Authors
Publisher
中国短期大学
Publication Date
Keywords
  • 日本的経営
  • 市場主義
  • 長期継続雇用

Abstract

「日本的経営」論議の社会的側面についての考察(1) The Social Aspects of the“Japanese Management”Debate(1) (1999年3月31日受理) 福 永 晶 彦 Fukunaga Akihiko Key words:日本的経営,市場主義,長期継続雇用 「でも,考えてみると,私は戦後日本はあまり好きにはなれないけれど,それにしてもこれだけ 強大な経済を築いた財界人が,なぜ自信喪失に陥る必要があるのかと思わざるをえない。」 佐藤 光(飯田他 199925ページ) 1.序 佐藤光大阪市立大学教授は飯田経夫中部大学大学院教授並びに佐伯啓思京都大学教授との対談の 中でつい七,入年前まで極端な「日本的経営」礼賛論が見られたのに今日では極端な「日本的経営」 批判論が一般化していることを指摘し,このような極端から極端へ走る我が国の傾向は戦後日本の 歴史的状況に根ざしている一種精神病理的問題ではないかと問い掛けている。そして,研究者やマ スコミだけでなく経営者までが自信を喪失していることに疑問を抱いている(飯田他 1999)。確 かに経営者やマスコミの言説を見るかぎりでは,佐藤の指摘する通りであり,「日本的経営論」の 我が国における評価のあり方を研究することは経営学的に興味深いだけでなく,我々の住む社会の 問題点を考慮する上でも重要であると思われる。そこで,本研究は1998年前後に発表された社会的 に影響力の強いマスコミ以外の諸団体(経済団体,官庁,労働組合)の文書で「日本的経営」とそ の関連事項を論じたものの分析を行い,その傾向を把握し,なぜ佐藤の言う「精神病理」的状況が 我が国で発生するのかの理解の第一歩としたい。 「日本的経営」もしくは「日本型経営」の定義は論者により異なり,一定のものはないが,一般 的には「日本型」の雇用制度,労使関係,企業間関係,企業統治の方法などを指すものと思われる。 本論文では特に「日本型経営」の「コア」にある雇用・労使関係,その中で最も重要である雇用の 安定を重視し,解雇を出来るだけ避ける傾向(俗に「終身雇用」,もしくは「長期継続雇用」と称 される傾向)についての論調を中心に考察していく。 一81 福 永 晶 彦 2.各団体の「日本型経営」論議 1)経済同友会「第13回企業白書一資本効率経営J 経営者団体の中で,近年「日本的経営」の改革を極めて強いスタンスで主張しているのは経済同 友会(以下同友会)である。同友会は『市場主義』u)を基盤に我が国企業の経営を根本的に改革 することを主張しており,それは1998年4月に発表された「第13回企業白書」で明確に示されてい る。同友会(1998)は同白書において「『日本的経営』として賞された過去の成功体験と決別し, 真の市場主義経済の荒波の真っ只中に漕ぎ出して行かなければならない(以下略)」(3ページ),「21 世紀を輝かしい『企業の世紀』とするために我々企業と企業経営者は日本的経営が持て離された過 去の成功体験にしがみつかず,もっと謙虚にしかし自信を持って長期的視野に立った自社の構造改 革に果敢にチャレンジしていかなければならない」(8ページ)と主張している。そして同友会は「市 場主義」に基づく企業経営を「資本効率重視経営」と定義し,「資本効率を重視することによって 利益をあげ,利益をあげることによって企業の価値と人々の企業への投資インセンティブを高め, 有利な資金調達で積極的に事業を展開して成長していく」(2ページ)経営と定義している。その ためには経営資源を「高収益部門」に特化・集中し,いわゆる「リストラ・リエンジニアリング」 を厭わず,「リストラ・リエンジニアリング」を従業員重視をするが故にためらったり,「伝統的」 な低収益部門を温存することは「株主に対する背信行為となるばかりでなく,結果として企業が破 綻」する原因となりかねないとしている。 これ以外に「市場主義」に基づく企業経営を行う上で,「コーポレート・ガバナンスの確立」,「十 分かつ正確なディスクロージャーとそのための場作り」,「労働市場の形成・インセンティブ制度の 導入による人事・雇用面での企業改革」,「『よき企業市民』たること」を強調している。特に雇用 に関しては「人事・雇用面の問題は資本の効率とはあまり関係のないことであるという考え方もあ ることを承知の上で」(6ページ)と断りながらも「雇用の流動化」に対応,もしくはそれの障害 となり得ると思われる諸制度の変更を提唱しているω。そして,「市場の再設計を考える委員会」 の旧年中に行ったアンケート調査をもとに「2002年目約8割の経営者は『収益を犠牲にしてまで雇 用を維持

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